Xavier Thuizat

Sakeist®︎アンバサダー
ホテル・クリヨン(5つ星/パリ)シェフ・ソムリエ
Kura Master 審査委員長
酒サムライ

GI地理的表示とは?

GIとは、原産地呼称の正しい使用を促進するための制度であり、産地にとっての共有財産となります。

酒類が産地の特性をよく表している場合、生産者組合からの申請により、日本国税庁長官がGI(地理的表示)を許可します。その後は、地域の生産者だけが自社製品に対して「GI」を名乗ることができるのです。(GI表示ができる条件は、GI指定地域で生産されたものであること、及び定められた生産基準を満たしていることです。)

そのGI地域の生産者には「他の製品との差別化」というメリットが、消費者にとっては、地元ブランド確立により、より信頼できる商品を選べるというメリットがあります。

 

 

なぜGI制度が確立されたのか?

WTO(世界貿易機関)の設立後、ワインと蒸留酒のGI地理的表示保護が加盟国の義務となりました。

そこで、日本国税庁は1994年に制度を制定。2015年の改訂により、すべての酒類が制度の対象になりました。

ボルドー、ブルゴーニュ、キャンティはGI地理的表示の有名な例です !!

日本のGIは、ワイン・焼酎・リキュール(その一つがGIに指定された和歌山の梅酒)・日本酒が対象です。

今日は指定された年順に、日本酒のG.Iについて説明いたします。

 

 

日本酒のGIについて:

 

 

「GI白山」 2005年指定

お米由来のしっかりとしたコク

「白山」のお酒には一般的に米から来るしっかりしたフルボディの味わいがあります。純米吟醸酒や吟醸酒には、穏やかなフルーティな香り、好ましい酸味、豊かでコクのある味わいがあります。

 

 

白山市の気候風土と継続的な品質改良の取り組み

石川県白山市は、1300年以上前から信仰の対象とされてきた聖なる白山から流れる手取川扇状地にあり、豊かな伏流水に恵まれています。

カルシウムが多くカリウムの少ない水は、酒造りの過程で穏やかな発酵を導き、米の溶解を促します。

この結果、米の豊かな風味をもたらし、豊かでコクのある「白山」特有の酒質が生まれました。

昔から品質に対する高い評価を得て、白山の酒メーカーは、山廃仕込みを用いた技術の習得や製品開発などにより、豊かな味わいとコクのある日本酒の生産に取り組んでいます。

また、2005年には地域ブランド「白山菊酒」を立ち上げ、その特性を維持と品質向上に努めています。

 

 

GI白山」の原料とルール:

  • 米と麹米は日本国内産であること(1等以上の格付け、精米歩合70%以下のみを用いる。)
  • 石川県白山市内で採水された水のみを使用。
  • 原材料に糖類等は使用しない 。
  • 醸造、貯蔵、瓶詰めは石川県白山市内で行うこと。
  • もろみ製造で液化仕込みを行わない。
  • 酒母を用いた製法で。
  • 麹米の使用割合は20%以上のこと。

 

 

 

GI日本酒」 2015年指定

 

「日本酒」は、日本の貴重で主食である米から造られた特別な酒類と定義されています。日々の消費に加え、伝統のお祭り・毎年恒例の行事・結婚式・葬式など、特別な行事で人々は「日本酒」を飲みます。「日本酒」は日本文化と伝統に深く根ざしています。

そこで、2015年12月に日本国税庁により「日本酒」がGIに指定されました。

「日本国内産米を使って国内製造の清酒のみが「日本酒」という呼称を独占的に名乗る権利を有する。」

 

 

メリット:

消費者にとって、日本以外の国で生産されている酒や、日本以外の国で生産された米から作られた酒と「日本酒」を区別し易くなります。日本国内産以外の酒類製品に「日本酒」という呼称を使用することは禁止されています。

「日本酒」は高品質で信頼性の高い日本産の酒類であることを、消費者にアピールできます。

「日本酒」と海外で生産された酒との差別化は、国際交渉を通じて多くの国でGI「日本酒」の保護を求めることで可能になります。これは「日本酒」のブランド価値を高めることに繋がります。

 

 

 

GI山形」 2016年指定

シルキーでクリアな味

山形酒は一般的に絹のような滑らかさと透明感のある味わいがあります。

「山形」の純米酒と本醸造酒は、酸味と旨味の調和が取れ、しっかりとしたコクがありながらも柔らかな味わいという特徴があります。

純米吟醸酒と吟醸酒は、滑らかな口当たりと果実の香りによりすっきりとした透明感のある味わいがあります。その果実味にはバナナや、山形県の特産であるリンゴ、メロン、ラ・フランスなどが感じられます。

これらの特徴が、透明感のある味わいを生み出しています。

 

 

山形県の気候風土と醸造技術の向上に向けた取り組み

山形県では冬には雪が多く降ります。そのため、山形の山岳地帯では溶けた雪が優れた地下水になります。

山形の水は軟水で、酒造りに適しています。この水が仕込み水として使われることで、「透明感のある酒質」になります。

また、山形県の冬の厳しい寒さは、雑菌の繁殖を抑制し、特に吟醸酒醸造にとって重要な長期低温発酵に適しています。

こうした理由から、山形は吟醸酒の醸造に最も理想的な土地の一つと言えます。県内では、山形県工業技術センター及び山形県酒造組合の指導のもと、人材育成や醸造技術の向上に取り組んできました。

こうした努力が山形県産の酒の全体的な品質を高め、山形酒の特性である、柔らかで透明感のある酒質を創り出しています。

 

 

GI山形」の原料とルール

  • 米・麹米は日本国内産であること。
  • 山形県で採水された水を使用すること。
  • 糖類等は原料として用いない。
  • 醸造、貯蔵、瓶詰めは山形県内で行うこと。

 

 

 

GI灘五郷」 2018年指定

余韻のキレが良い酒

一般的に言えば、灘五郷の酒はバランスの取れた味わいと余韻におけるキレの良さが特徴です。

特に、夏の間の熟成を経て秋に出荷されるお酒はなめらかで風味豊かになり、飲み進めるほど様々な側面が感じられ飲み飽きすることがありません。

この「秋上がり」を経た酒のうち、温度が外気温に近いまま貯蔵され、貯蔵タンクから外気温に近い温度に冷めた酒を火入れせずにそのまま出荷するものを「ひやおろし」と呼びます。

「冷やおろし」は灘五郷では伝統的に9月以降に出荷されてきました。また、華やかなフルーティな香りとフルフレーバーさが組み合わさることで、純米吟醸酒・吟醸酒は香りや味のバランスの取れた、後味もよりキレの良い酒になります。

 

 

灘五郷の気候風土と品質向上への取り組み 

灘五郷では、冬には六甲山から冷たい風が吹き荒れ、冬の醸造に非常に適した気候をもたらします。また、この地域の地層を通る地下水には酵母の増殖に必要なミネラル分が含まれ、酒造りに適した硬水をもたらしています。この地下水を仕込み水として使用することで、強く健康的な発酵を促し、香味のバランスが整い、後味のキレの良い酒になります。

灘五郷では、日本三大杜氏の一つである丹波杜氏が持つ伝統的な醸造技術により醸造しています。また、技術者・研究者による民間組織「灘酒研究会(SNSR)」では、酒造技術の向上や人材の育成に注力しています。

また、灘五郷酒造組合と地方自治体との合同で、地域内の地下水を研究し、灘五郷酒の品質を維持してきました。

こうした取り組みの結果、灘五郷の特性は、時代を経て、現代まで受け継がれてきました。

 

 

Gl 灘五郷」の原料とルール

  • 米・米麹は日本国内産を使用(農産物検査法により格付された3等以上)のみ。
  • 灘五郷で採水された水のみ。
  • 糖類等は原料として用いない。
  • 灘五郷内で醸造・貯蔵・瓶詰めする必要があります。

 

 

 

「GIはりま」 2020年指定

兵庫県産山田錦米により生み出される軽快で、爽やかな酒質

一般的に、はりまの清酒は柔らかくて優しい丸みを持ったお酒で、苦味や渋みは最小限に抑え、豊かなコクと花開くような豊かな香りを持つ繊細な味わいが特徴です。

兵庫県産の山田錦を用いた米麹を使い、心地よい酸味と爽やかな後味を生み出しています。

特に純米大吟醸酒と吟醸酒は、甘くて華やかでフルーティなリンゴのような香りが心地よい酸味と調和し、さらに良質な酒質を生み出し、喉ごしがとてもなめらかです。

 

 

はりまの気候と自然環境/ 山田錦の保全に向けた取り組み

はりまの穀倉地帯にはミネラルが豊富な粘土質農地が広がり、稲が実る時期には一日の気温差は大きく変動します。

このような気候と自然環境は、心白の大きさや脂質とタンパク質の低さという点で山田錦米に良い影響を与え、酒米として大変優れたものとなっています。

山田錦米品種は1936年に開発され、以来、原種が保存管理されています。

主要作物種子生産条例に基づく米質の厳格な維持管理により、山田錦は兵庫県原産とされています。

 

 

「GIはりま」の原料とルール:

  • 米・米麹は兵庫県で収穫した山田錦のみを使用。
  • はりま地域内で採取した水のみを使用 。
  • 原料に糖類等やその他の成分は加えない。
  • はりまで醸造・貯蔵・瓶詰めすること。

 

 

 

GI 三重2020年指定

温かみ、エレガントさ、豊かなコクを持つ日本酒

三重県の日本酒 は 一般的に、フルボディでありながらエレガントな酒質で、温かみがあります。甘口でも辛口でも、ビロードのような口当たりと、飲むにつれ次第に生み出される心地よい豊かなコクがあります。

熱燗でも冷酒でも或いはその間のどの温度帯でも、穏やかな温かさが口中を満たします。

三重のコクがありエレガントな酒は、獲れたての新鮮な貝類と完璧なペアリングをなすでしょう。

 

 

三重県の気候と自然の特徴と醸造技術の向上に向けた取り組み 

三重県の気候は、黒潮の影響を受けた温暖な夏と、鈴鹿おろしと呼ばれる冷たく乾燥した風によってもたらされる冷涼な冬があります。

高度千メートル以上の鈴鹿山脈の頂きを覆う雪と紀伊山地に降る多雨は、水量豊富で優れた水源となり、温かみがあってしっかりとしたコクのある酒を生み出しています。

近年、三重の酒蔵は県工業研究所と協力して、地域の気候風土に合う三重独自の清酒酵母や醸造技術を開発するとともに、三重県清酒研究会における若手技術者による最新の醸造技術の研修を通じて、酒造技術者の技術向上にも取り組んでいます。

 

 

GI 三重」の原料とルール

  • 米と米麹は日本国内産のみ(農産物検査法により格付けされた3等以上)。
  • 三重県内から採水された水のみを使用。
  • 「特別指定酒」として、優れた味わい・色・透明さを有する酒であること。
  • 三重県内で醸造・貯蔵・瓶詰めを行う。

 

 

 

G I利根沼田」 20211月指定

透明感のある味わいと適度な旨味

利根沼田の酒は、総じて透明感のある味わいに適度な旨味を味わえる酒質を有しています。

色合いは、クリスタルをベースに透明で淡いゴールドです。

この酒には、軽い旨味、甘み、そして利根沼田地方で育つ緑野菜や食用の野草を思わせるかすかな苦味があり、心地よい後味があります。

 

 

利根沼田の気候風土と品質向上への取り組み

群馬県北部に位置する「利根沼田」。夏の日照時間は長く、一方冬は厳しい気象条件です。

穂高岳をはじめ周囲の山々からの豊富な軟水が、利根沼田酒の透明感の大きな要因です。

さらに、この地域は長い日照時間と大きな一日の気温差のため高品質の米を生産し、冬の厳しい寒さと相まって、酒造りに最適な環境を作り出します。

さらに、この地域の酒蔵は長い間密接な協力関係を築いており、現在では蔵元や杜氏を雇ったすべての醸造所と共に、研究と酒造りの知識や経験の蓄積を通じて、地域独自の酒質を維持し、改善するための努力がなされています。

 

 

「GI利根沼田」の原料とルール

  • 利根沼田地域内で生産される以下の米品種のみを使用すること。

 ・雪ほたか・五百万石・コシヒカリ

  • 仕込み水は利根沼田地域から採水し、沈殿及び濾過以外の物理的又は化学的な処理をおこなっていないこと。
  • 発酵には以下の酵母のみ使用可。群馬KAZE酵母、 群馬G2酵母、蔵つき酵母(利根沼田で採取・培養された酵母のみ)
  • 原料にアルコールや糖類等を含まないこと。
  • 水の代わりに清酒を使用する場合、上述の製造方法からの清酒のみを使用してもよい。
  • GI利根沼田の品質基準に従って醸造・貯蔵・瓶詰されること。

 

 

 

GI萩」 20213月指定

GI萩」の特徴 

 総じて、萩の清酒は米由来のふくよかで上品な旨味と爽やかな酸味を持つはつらつとした味わいが特徴です。

熟したバナナ・メロン・ライチに加えて、青竹と新緑の香りを感じます。萩の清酒の中でも吟醸酒にはリンゴやパイナップルなどの果物の香りがあります。

余韻には、酸味・苦味・軽いアルコール感を伴う一定の旨味が感じられ、合わせる食事の風味に影響を与えませんし、この酒は、連続して数杯飲んでも飲み飽きさせない酒質を有しています。

萩の清酒はそのはつらつとした味わいが、萩の特産品である白身魚やかまぼこ等の味の淡泊な食材と組み合わせると、一層食の繊細な味を引き立たせます。

 

 

自然的要因 

萩は地理的に本州最西端にある山口県の北部に位置しています。この地域は平野が小さく、海抜400メートルほどの山々に囲まれており、その北側だけが日本海に面しています。

この地域には「阿武火山帯」の火山活動によって作られた小さな溶岩台地が点在し、阿武川・蔵目川・田万川などが複雑な流路でその間を流れています。河川に浸食されて出来たこの溶岩台地の、主にむつみ地域と福栄地域を中心とした山間部に小さな平らな台地が存在。この水はけの良い粘土質土壌でできた台地で稲作が盛んに行われています。

気候は、日本海の暖流である対馬海流の影響により、比較的温暖な気候です。特に、稲作が盛んな中山間地では、7月から8月までの日々の気温差が大きく、成熟した米の生産に適していると言えます。

 

 

GI 萩」の原料とルール

  • 米と米こうじは、産地の範囲内で収穫された米(農産物検査法により格付けされた3等以上)から選ばれること。
  • 水は、産地の範囲内でのみ採水されたものであること。
  • 酒税法第3条第7号に規定する「清酒」の原料を用いたものであること。
  • 酒は、産地の範囲内において清酒の製造方法により製造されたものであること。
  • 酒造りの行程で酒を貯蔵する場合、それは産地の範囲内にて貯蔵されること。
  • 瓶詰めは、消費者に引き渡すことを予定した容器に産地の範囲内で詰めること。

 

Xavier Thuizat

Sakeist®︎アンバサダー
ホテル・クリヨン(5つ星/パリ)シェフ・ソムリエ
Kura Master 審査委員長
酒サムライ